終わらない夏空
とんでもねえゲームと出逢っちまった。
…ので、興奮醒めやらぬまま鉄は熱いうちにトンテンカンテンしてやろうと思い立ち、急遽この記事を書き始めている。
今回プレイしたのは、2010年にPS2で発売され、その後2013年にPSP、2017年にスマホアプリへと移植された、大手乙女ゲーブランドオトメイトの伝説の泣きゲー
夏空のモノローグである。
正確に言えばPSP版「夏空のモノローグportable」なんだけど、まあ細けえこたあいいんだよ。
正直、私は人一倍涙腺が緩い。
すぐ泣く上にめっちゃ泣く。
よほどのクソゲーでない限り、大半の乙女ゲームで一回は涙をこぼしちゃうくらい泣き虫なのだが。
夏空に関してはもう、泣きすぎて眼球溶けるかと思った。
もしかしたら少し溶けてたかもしれない。
そのくらい、ちょっとビビるくらいの量の涙がザブザブ出た。ポロポロとかじゃない。ザブザブ。
嗚咽出すぎてオットセイみたいになってた。
***
夏空のモノローグは、いわゆる泣きゲーと呼ばれる涙腺ダイレクトアタック作品(?)なのだが、初めに言っておくと、別にものすごく暗いとか、シリアスな作品というわけではない。
ていうかむしろ物語の半分はお笑いシーンで構成されているといっても過言ではない。
制作陣はネタを挟まないと死ぬ病気か?と思うくらい、わりとふざけちらかしている。
それなのに、エンドを迎える頃には馬鹿みたいに泣いてしまっているから恐ろしいのだ。
今や私はOP曲を聴くだけで、夏空のことを思うだけで……いや、もう蝉の声を耳にしただけでも涙が出てくる。今年の夏、晴れ渡る空の下を泣きながら歩く私は不審者決定だろう。
それくらい、深く深く心に突き刺さった。
出逢えたことを感謝したくなる名作だった。
まだ夏空を知らない人に、この作品を届けなければ…!と謎の使命感に駆られるくらいには、心揺さぶられた。
さて。
まあ内容に触れずにこんなことを言っていても仕方ないので、とにかく「夏空のモノローグとはどんな作品なのか」を紹介していきたいと思う。
↑こちらは、公式サイトからはもう見られないPSP版のプロモーション映像。
公開してくださっている方に心から感謝を。
これを観ていただくのがまずは一番手っ取り早い。
…観た?
観たね?
そう、映像やタイトルからもわかるように、
これはある夏の一日を繰り返す物語だ。
映像なんか見てられっか!という方のために、以下にあらすじと、簡単なキャラ紹介を書いておく。
おおまかには動画にある通りだが、特にキャラ紹介に関しては個人の独断と偏見を含んでいるのでその点はご了承願いたい。
***
海辺の田舎町、土岐島市に住む、
高校2年生の少女・小川葵。
(好きな食べ物:砂糖)
甘いものを前にするとテンションがおかしくなるが、普段はいたって大人しい普通の女の子。
彼女には、1年前より昔の記憶がない。
1年前。
病院で目を覚ました時には、記憶の全てを失っていた。
「私は誰なんだろう…」
自分が何者なのかさえ定まらず、母親との不和を抱える葵にとって、唯一の心安らげる居場所は、高校で所属している科学部だった。
科学部のメンバーは、葵と顧問を含めて6人。
非常識なほど天才なアルティメットミラクルバカ
部長・沢野井 宗介(cv.高橋伸也)
心優しい科学部のオカン…だけど泣く子も漏らす顔面ヤクザ
副部長・木野瀬 一輝(cv.阿部敦)
毎日告白、毎日玉砕。猪突猛進する愛の暴走機関車
1年生・加賀 陽 通称:カガハル(cv.高橋直純)
1年生・篠原 涼太(cv.代永翼)
モットーは無気力・無関心。ダメな大人代表
科学部顧問・浅浪 皓(cv.井上和彦)
ーーー
賑やかな仲間たちとの騒がしい日々は、
葵の心の拠り所になっていた。
ーーーしかしこの夏、科学部は廃部が決定する。
7月29日、最後の部活動として、科学部の面々は謎の超高層建築物『ツリー』を観測しにいく。
30年前の土岐島市に、空を割るように突如として現れた、全てが謎に包まれた存在。
世界中の関心を集めたのも束の間、何ひとつ解明されないまま研究者は皆匙を投げ、今やただの寂れた観光資源となってしまった白い塔。
部長は言う。
今夜、ツリーが歌うのだと。
半信半疑の部員たちは、科学部最後の夜のピクニックを楽しみながら、ツリー広場へと赴いた。
そしてその日、
その時、
その瞬間。
ツリーは歌い出し、
7月29日はループを始めた。
***
こうして夏空のモノローグは始まる。
大切なものが失われる明日を目前にした、永遠の一日。
ぬるま湯につかるような心地よい停滞。
書いた文字は消え、壊れたものは元に戻る、何ひとつ積み上げられない日々。
降り積もっていく気持ちと記憶。
科学部のメンバーたちは、それぞれが仲間にも話せない複雑な事情を抱えている。
それにより、早くループが終わって欲しいと願う者もいれば、このまま今日を繰り返していたいと願う者も、"それ以外"を願う者もいる。
拠り所を失うことを恐れるヒロインは、それぞれの心の内に触れ、また自分の抱える問題を見つめ、少しずつ成長していく。
明日を選ぶ覚悟が持てるまで。
***
私が夏空のモノローグを「すごい」と最初に感じた点。
それは、このループする日々が単なるモラトリアムに過ぎないという点だ。
全てがループする中、科学部の面々だけはループ中の記憶が残るので、彼らは次のループではあれをしよう、これを調べようと、ループ研究と称した活動を精力的に行う。
一見、日々は刻々と過ぎているかのように見える。
しかし実際のところ、"今日"は変わることなく、同じ空に同じ雲が流れ、人々は同じ動作を繰り返している。
このまま何十回、何百回ループを繰り返したところで、「明日になれば大切なものを失ってしまう」という状況は絶対に変えることができないのだ。
そんな中でこの作品は、彼らが「明日」に踏み出すまでを描く。
現実は何も変わらない。
変わるのは彼らの心だけ。
そこを徹底的に描ききっている。
これが本当にすごい。
誰しも一度は考えたことがあるんじゃないだろうか?
「明日、いやだなあ」とか。
「ずっと今日みたいな日だったらいいのに」とか。
夏空のモノローグは、そんなささやかで切実な願いが叶ってしまった世界を舞台にし、彼らを通してプレイヤーに明日への希望の持ち方を教えてくれる物語だ。
古いゲームだが、こんなご時世だからこそ沢山の人にプレイしてみて欲しいと思う。
この作品に心を救われる人がきっといるはずだ。
さて、ざっくりと内容を紹介しただけだが、それでもいくつか疑問に思った点があると思う。
◎ヒロインはなぜ記憶喪失になったのか?
◎30年前に突如現れた謎の建造物、『ツリー』とは一体なんなのか?
◎なぜループが起きているのか?
◎何が、誰がループを起こしているのか?
…あと、映像に映っていた
こいつは誰なのか?
本編をプレイすれば、それら全ての謎は解ける。
が、最後の疑問にだけは先に答えておこう。
彼の名前は綿森 楓。(cv.岡本信彦)
お察しの通り、夏空のモノローグにおける超重要キャラクターだ。
彼のルートももちろんある。
しかし、それは科学部を全員クリアしたあと。
この作品は、1周目、2周目、3周目…と、ひとりクリアするごとに共通ルートに変化が起きる。
変わらないはずの7月29日が、少しだけ変わる。
それがどういうことなのかは、最後のお楽しみ。
また、各キャラクリアごとに追加されていく「ツリーピース」でも、ほんのりと過去に何があったのかが見えてくるので、じっくり楽しんでほしい。
夏空のモノローグの紹介は以上とする。
あまり多くを語るべきではない気もするし。
百聞は一見に如かず。
内容は基本同じだが、新しくなるにつれイベントが少し増えているので、今からプレイするならスマホアプリ版が一番良いと思う。手軽さ的にも画質的にも。
本当に、胸を張ってオススメできる作品だから、絶対にやって損はしないから、ぜひプレイしてほしい。
そしてどうか最後の最後まで、彼らを見届けてあげてほしい。
ラストの感動は、最初から最後まで愛を持って見守ったプレイヤーの心に大切なものを残してくれるはずだ。
ちなみにオススメ攻略順は
カガハル→浅浪→篠原→沢野井→木野瀬→綿森。
まあ好きなようにやっても問題はないが、沢野井や木野瀬は最後らへんの方がシナリオが映えるような気がする。綿森は真相ルートなので固定だ。
さらにちなみに、個人的に泣けた順は
篠原>>>【越えられない壁】>>>カガハル>>>>>木野瀬>>綿森>>沢野井>浅浪
だった。
篠原ルートは本当に、目玉が溶けて心臓が砕けるので注意してほしい。
私は2日間くらい思い出しては声を出して号泣していた。
篠原が幸せにならない世界線など私は絶対に許さないし認めない。そんな世界は滅んでよし。
…さらに余談だが私の推しはカガハルだ。
本編プレイ中からずっと大好きだったけど、ドラマCDでの篠原との会話を聴いてガチ惚れした。
登場キャラ内で一番中身がイケメンで精神的に大人なのは、間違いなくカガハルである、ということをここで主張しておく。
ちなみにカガハルの次にイケメンなのは葵ちゃんだと思う。
さあ、どうだろう。
夏空のモノローグ、やってみたくなってくれたりしちゃっただろうか?
そうであることを祈る。
そして予言しよう。
夏空のモノローグをプレイしたあなたは、
すべてクリアしたあと、きっとこう呟くと。
今日はきっと、いい日になる。
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